[コメント] 春との旅(2009/日)
娘を亡くした祖父と父を失くした孫娘。互いにとってオルタナティブな存在の二人が、祖父の兄弟と孫娘の父を巡る旅の終わりに、誰かの代わりではなく、お互いにとって真に必要な存在になる瞬間を描いている。真摯な作品。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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『東京物語』との類似が指摘されているが、個人的には『都会のアリス』『ペーパームーン』『イリュージョニスト』あたりを想起させた。決定的な“何か”を失ったもの同士が道中を共にする中で互いの存在に意味を見出していく、という点で。とにかく、テーマ、キャラクター、アクション、作品世界の隅々に至るまで徹底的に作り込まれており、画面の中で展開するストーリーが実にリアルな情感に満ちている。
プロットだけみれば全く起伏に欠ける映画になりそうなものだが、仲代達矢をはじめ、小林薫、田中好子、柄本明、香川照之など、本物の役者が勢ぞろい。彼らのアンサンブルだけで十分楽しめる。また唯一の若手である徳永えりも健気に奮闘していて好感がもてる。そして何より、小林監督のねっとりした演出が最高。最初ぷんぷん言いながら小屋から飛び出してきた仲代さんがみるみるダダこねるだけのボンクラじいさんになっていく過程や兄弟たちとのやり取りは諧謔味とペーソスが入り混じっていて、実に切なく、本当に楽しい。
良い日本の映画だと思います。以上、取り急ぎ。
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