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[コメント] 心と体と(2017/ハンガリー)

最高の大人のファンタジー。敬愛すべき監督がまたひとり増えた。
pinkmoon

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







繊細で美しく丁寧な撮影。 マーリアの内面を瑞々しく的確に映し出す。 そして小さな事件と妖麗な精神科の女医が映画に変化をもたらす。

それまで病的で冷淡な印象しかなかったマーリアだが、エンドレを意識し始め試行錯誤する頃から彼女への印象が変わっていく。 そして彼女がマイノリティだと理解する。 しかしよくここまで社会生活ができたものだ。 それでも劇中、マーリアのハンディキャップの深さを伺い知ることはできず、手首を切って自殺を図ることで初めてハッとさせられる。 我々日常での表層的な付き合いも同じだ。 興味を持って接さない限り相手のことはほとんど分からない。

心はすでに通じ合っているのに体の接し方が分からない。 夢の中では牡鹿が走る走る。 エンドレがマーリアから遠のく。 しかしエンドレが電話で最後に勇気を持って語った一言がすべてを救う。 こんなにお互いを労わりあうセックスがこれまでにあったか。 エンドレの優しい息遣い。 それを受け入れるマーリアの驚きと喜びに溢れた目。 これは鹿の交尾だ。

「眠くなりました」「寝ましょう」 彼女の右手が彼の不自由な左手を支える。 翌朝二人には安堵の笑顔が訪れる。 本当に良かった。 今日は仕事が休みだといいのに...などと勝手に思ったする。 もう二人は鹿の夢を見る必要はないのだ。

すばらしい現代の寓話。 そして私には村上春樹の小説と同じ喜びを感じた。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)寒山拾得[*] ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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