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[コメント] ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場(1986/米)

冗長は自惚れの表象を決定付けるプロット作家のSO-SOフィルモグラフィ蓄積作品
junojuna

 寅さんは今回長崎におりますみたいなイーストウッドのフィルモグラフィワークである。しかしそれでこそイーストウッド映画。たくましいブランディングを誇示した偉大なるマンネリズムである。山田洋次の『男はつらいよ』シリーズはさておき、小津映画はそのマンネリをもって今や巨匠と誉めそやされ、かつてヴェンダースは小津映画を総称して比類なきロードムーヴィーと称えた。まさしくイーストウッドの仕事とは俳優イーストウッドをあらゆる世界へと投機し、ゆるぎない男の矜持を主張して峻厳なゴーイング・マイ・ウェイなロードムーヴィーといえる。やはりその作品よりも功労を評価すべき作家性として映画史に確かな痕跡を残していることに注目したい。イーストウッド映画の特徴および強みはなんといってもプロットの強度にある。テーマならば男の矜持という同一主題、モチーフはジャンルの踏襲という平均的な設定において個性は見出せないが、プロットの起こし方、カタルシスへの布石の妙技こそがイーストウッドの真骨頂である。譬えるならばWWE(アメリカのプロレス団体)的メークドラマとでも言おうか。その努力もしかし本作はいつもながらのセルフプロデュースゆえの自惚れが映画の冗長を促し、映画の主人公同様、受難の憂き目に合っている感が否めない。その点では主人公と逆に饒舌であるところが面白い。いわゆるひとつのトゥーマッチ。

(評価:★3)

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