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[コメント] 狂い咲きサンダーロード(1980/日)

石井聰亙パンク・イヤーズきっての傑作としてカルトクラシック級のGOODムービー
junojuna

 まさしくプリミティヴ・アート。野生の映画魂が凡百を超えるファンタスティックな傑作である。何よりも山田辰夫の存在感に依るところが大きい。山田辰夫の発掘という石井聰亙の映画センスは映画史的にもっと評価すべきだろう。この映画の魅力を語るひとつのポイントに、映画の体裁を通訳するコードとしての表現技術を標準語と譬えた時、それを上回る魅力を備えた方言ともいうべき口調の差異に立ち現れる言語力にこそあるといえる。それは語彙や構文の未熟さを補って余りある語感としての強さであり、それが天然の不可抗力となって提示される瞬間にインパクトは増大され、抗いようもない原初的な美が生み出される。これまでの日本映画において同列に並べるとすれば、清順-聰亙という関連を見出せる。もっとも清順映画にあっては、映画言語の使用に秀でた能力を持ちながらそれをあらかじめ放棄するといったスタイルを採るためにバロック的な美学であるが、聰亙映画においては、直情的なアクロバット志向による破綻を孕みながらも、旺盛な映画愛に称揚されていることで救われるプリミティヴな天然美の結晶を獲得している。いづれも日本映画史においてのトリックスター的な役割を果たしている点で、ファンタスティックムービーの可能性を体現している功績には論を俟たない。言わずもがなカルトクラシック。

(評価:★4)

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