コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] チャップリンのパン屋(1914/米)

ドラマ性やシチュエーションから言ってコントとしては長すぎる尺がBADなサイレントコメディ
junojuna

 キーストン時代の最大のヒット作と聞いて見た本作だが、前半のチャーリーのギャグはいつもに乗じて厚かましく勢いのある立ち上がりであったが、これといったドラマ展開の薄いシチュエーションに、コントとしては長すぎる尺ゆえに退屈な作品であった。どうやらチャーリーの勤めるパン屋の支配人は強欲で人使いが荒いという設定であるらしいのだが、従業員がチャーリーであることの設定を見れば、そこに対立関係のギャップは浮かび上がらないので、ドラマとしての布石を呼ぶことなく無理のある仕掛で冗長にして退屈という印象である。粘り気たっぷりのパン生地ネタがしつこいくらいに繰り返され、また室内喜劇のスケール感も伴って、やはりどこか強引な帰結で持って幕を閉じる映画は鑑賞者を引っ張るテンポを用意することが出来ず終息してしまった。この時期は不思議と室内、室外という舞台設定による映画の膨らみが出来を左右するといった趣を湛えていて面白い。アクションや造形物をいかに使うかというアイデアで構築されるチャップリンの技芸を思えば、舞台空間の数を数えることができるほど豊かなパフォーマンスを期待できるということに異論はないだろう。またこの時期はドラマよりもパフォーマンス主体で見せるチャップリンだけに、その点での窮屈さは惜しい限りである。もはやキーストン時代、セネットの子飼い時代晩期の作品である。この窮屈さはチャップリンの奔放な想像力をスモールパッケージホールドするものであり、ゆえに3ヶ月後には1915年を迎えようとする秋季、エッサネイ時代への前進を予感させる一作といえる。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。