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[コメント] グレイテスト・ショーマン(2017/米)

大いに楽しむ。冒頭のThe Greatest Showの終わりにショーウィンドウの向こう側の衣服と窓に映った少年のショット、続いて少年が視線を下に移すバスト、そして穴だらけの靴。これだけで状況を把握させるオープニングに期待感が大きく増す。
赤い戦車

A Million Dreams(歌い出しの浜辺もちゃんと風を吹かせているのが良い。これは後に青いショーツの翻るショットで反復されている。)では歌の間に時間経過を見事な省略で語り、そのRepriseでは吊られたシーツにまで踊らせているのが良いアクセントになっている。

The Other Sideでの、バーテンダーを含めた酒の受け渡しの動きも素晴らしいが、白眉はNever Enough、This is Me、Rewrite the Starsでの高低差を含めた視線の演出であろう。

Never Enoughではレベッカ・ファーガソンの視線と、その歌唱に涙ぐむヒュー・ジャックマンへの切り返しとを緩やかなズームと切り返し毎にカメラの距離を近くすることでエモーションを盛り上げる。ここに観客席のミシェル・ウィリアムズの視点を挿むことで感情に複雑さを与え、さらにはザック・エフロンとゼンデイヤの手の握り合い、周囲の人間の視線に思わず手を離してしまいゼンデイヤが立ち去るまでを台詞なしで描く。それぞれの人間関係の変化を視線の演出で表し処理している。

This is Meでもエフロンとゼンデイヤの切り返しを高低差と結び付け、それがRewrite the Starsの高所から低所へ、上下の移動を伴う追いかけ合いとなって再現される(Never EnoughのRepriseでブランコの運動と皿を落とす動作とが、不吉な予感を一瞬だけ画面に過らすのも上手い)。

全体に場所と場所の距離を無視して繋がらないはずの空間(海辺とミシェル・ウィリアムズの実家など)を役者の動きやカッティングであたかも繋がっているように見せるのがいかにもミュージカル映画らしい。また、CGを混合したプロダクション・デザインの嘘くささ(ボロアパートの屋上の背景、2つ並んだ高架線とその蒸気、象に乗って家族の下へやってくるジャックマンetc)も貢献。同じシチュエーションの反復を積み重ねていく作劇も悪くない。

ロングショットに自信が無いのか、良いショットを早々に切り上げ接写へ逃げる悪癖(フルショットからフルショットへのアクション繋ぎの少なさ。或いは、病床のエフロンの元で歌うゼンデイヤのアップはどうなのか。ひょっとすると新人の売り込み目的で挿入されたのかもしれぬが)もあるが、それはもう現代ハリウッドの宿痾と割り切る。

(評価:★4)

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