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[コメント] シチリア!シチリア!(2009/伊=仏)

淀川さんがいまここにいたらどんな解説をしてくれるだろう?是非聞いてみたかった。そんな思いを抱かせる映画だった。
ルリマツリ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







シチリアの町バーリアで牛飼いの子として生まれたペッピーノの人生を、シチリア激動の歴史と共に描いた本作品は、1人の人生と言うより魂の歴史を描いているようだった。

映画の中に出てくる蛇のシーン、また、「三つの岩山に一つの石を順番に当てると秘密の扉が開く」と言う三つの岩山は、シチリアのシンボル「トリナクリア」を示唆しているように感じたのは私だけだろうか。

トリナクリアのデザインはメデューサの顔を中心に3本の足が顔を取り囲んでいる。メデューサの髪は蛇、三本の足はシチリアのパレルモ、メッシーナ、シラクサの3つの岬を現していると言うことなので、三本の足を三つの岩山として表現したのではないだろうか。

こんなことを思うのも数年前にシチリアを訪れ、パレルモやメッシーナを肌で感じ、土産物店でトリナクリアの奇異なデザインにとても興味を持った経緯があるからで、今回この映画を観る機会を得たのも単なる偶然ではないように感じた。

最後に年老いたペッピーノがどうせダメだろうと岩に向かって石を投げると、奇跡的に石は三つの岩に当たって落ちた。秘密の扉が開きそこにあったのは宝物ではなかった。 もう一度人生はやり直せる、やり残したことはないか?、後悔はないか?、自分の思うようにもう一度生きろ、と言うプレゼントだったのではないだろうか。

かつて自分が住んでいた家の取り壊し現場で、少年のペッピーノが、娘のイヤリングを見つけるシーンでは、心ならずも娘に手を挙げた自責の念を、ずっと持ち続けていたのだと感じて、涙した。

映画のラストシーンで割れた駒の中から閉じ込めたハエが飛び立つシーンが、解き放たれて自由になった魂を象徴していたと思う。

笑い、ペーソス(哀愁)、騒々しさ、人情、感動、絆、愛、そしてイタリア映画の全てがこの映画に詰まっていた。

ちなみに原題は「BAARIA」。 トルナトーレ監督の出身地、シチリアパルレモに近い海辺の町の呼び名。

どうして邦題っているんだろうね?

(評価:★5)

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