リンチの映画はすべて見ているが、ここまで理解不能だったものはなかった。もちろん意図的に説明を避け、理解不能に仕上げているのだろうが、あまりにも観客を無視した映像には辟易させられる。

パラレルワールド的世界、複数の人格を表現する女優としての内面を表している娼婦たち、過去に殺人があったという脚本、ポーランドでの入れ子的物語、などなど後付けで解釈しようとすればなんとでも説明はつくが、このような映画が高評価を受けていることは理解できない。

物語性の排除が一定の評価を受けるものだとしても、製作者の自己満足的表現を押し付けるのはどうかと思う。もちろん、見るか見ないかは観客の側に選択権があり、このような映画を楽しめる人向けに作っているのだとしても、その姿勢には疑問を感じる。

180分という長尺自体が疑問だし、無駄なセリフがあまりにも多い。そしてラストは冒頭とかぶせるという短絡的な筋の回収。エンドクレジット時の歌と踊りも、本編ではできないカタルシス作用を押し付けているともとれる。

理解することを放棄し、不平を言わない物分かりのよい観客をこの映画は求める。それ以外の人は180分を無駄にするだけだ。このような作品が評価されるのが映画というメディアだとすれば、映画を見る人口は確実に減っていくことだろう。