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[コメント] ダラス・バイヤーズクラブ(2013/米)

ひとりの人間の行動が社会的ムーブメントになるという典型的なおはなしだが、視点や視界の変化が非常に巧みで、いろいろな事を考えさせられる名作。
サイモン64

田舎者で偏見の強い粗暴な男が、人とのかかわりを経て変質してゆくさまが非常に緻密に描かれていて、特に終盤、ビジネスパートナーでもあった性同一性障害者レイヨンとの心のふれあいには痛く感動した。

主演ふたりの過激なダイエットによる状況描写が話題になりやすいところだが、この映画が説得力を得たのは彼ら二人のすばらしい感情表現あっての事だと思う。

また、カメラが時に主人公ウッドルーフの問題にフォーカスしたかと思うと、彼を取り巻く人々、地域社会、国家という範囲を自然に行ったり来たりする構成のうまさによって全体を見事に説明しながら、やはり社会と関わることによって生じた主人公の変化と、その反対に彼の行動が社会に巻き起こした変化というものをリアリティをもって描いていたのは監督や脚本の質が非常に高いのだろうなと感じた。

その一方、同時代的にアメリカ各地で同様のクラブが存在していたとか、なんでウッドルーフがレイヨンからクスリを取り上げないのかとか、そのあたりもうちょっと説明して欲しいところもあったのだが、最初から最後まで画面に引き込まれた。

しかし、アメリカの市民運動の強さというのか、事実を知って政府や役所に働きかける権利意識の高さや、原則を重んじる一方で緊急性もないがしろにしないアメリカの行政にも感心した。(アメリカの社会が必ずしも常に日本より優れているとは思わないが、アメリカの場合、優れているところはとことん優れているなと感じる。)

(評価:★5)

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