[コメント] 2001年宇宙の旅(1968/米=英)
現在においてはこの映画がかましているコケオドシの大部分は既に無効になっていると思うし、その堂々としたコケオドシぶりに少々しらけてしまう気持ちがないでもないが、それでも傑出した作品であることに揺るぎはない。
冒頭のシークェンスは、人類が人類になる直前の姿をこれほどさもありなんといった形で描きえた映画はいまだにないと思わせるほどだし、人間(擬人化された動物・モノを含む)がひとりも登場しなくても劇映画は成立するという予感さえも与えてくれる。
優れた映画がすべてそうであるように、この映画もやはり優れた「撮影」と「演出」の映画なのだ。それは猿人のシークェンスをとってもそうだし、HAL9000の視覚の描き方ひとつをとってもそうだ。
物語の分かりにくさ(=説明的描写の少なさ)を批判すること、そこに神秘性ないし哲学性を読み取って称賛すること、また様々な物語的解釈を楽しむこと、どれも観客の自由であることは云うまでもない。だが、私にとってこれはひたすら視覚と聴覚を乱暴に刺激する即物的/原始的なフィルムであり、「分かりやすさ」という指標からは無縁なところで語られるのがふさわしい映画だと思う。まあ、どのような作品であろうと、映画が「分かった」ためしなんて私にはただの一度もないのですが。
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