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[コメント] マザー(2014/日)

私小説と幻想小説の間に引かれるべき境界線など存在しなかったことを発見し、その豊かな荒野の開拓を進めたのは日本近現代文学史における最も偉大な成果のひとつだが、その地平にもっぱら独力で到達する処女長篇映画を物にした楳図かずお先生は、まずやはり企画立案者として窮めて明晰な頭脳の持ち主だ。
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さすがに視覚的に撮り進めようとした形跡は認められるものの、画面は構図・照明いずれの点においても今ひとつ決定力を欠く。撮影者の力不足、と云って不味ければ予算不足の感は否めない。

真行寺君枝の行動原理は典型的な怨霊のそれだが、衣裳(ウィッグ)・メイキャップ・演技設計も含めたその総合的造型は楳図先生独自の仕方による和洋折衷が推進されており、図らずも(あるいは作品全体の漠たる印象も)どこか黒沢清スウィートホーム』を想わせるところがある。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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