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[コメント] 女の中にいる他人(1966/日)

これだけ綺麗だと殺されるのもむべなるかなって感じだよね、なんとなく。などと論理不明瞭かつ無責任きわまりない言葉を呟かせてしまう若林映子の美貌はむろんこの映画にとって瑣末な細部でしかなく、真に見るべきは過剰演出家としての成瀬の姿だろう。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







作品を見れば見るほど成瀬の凄さを痛感する。少なくとも、こと照明によって場面を演出することにかけては成瀬こそが日本一ではないだろうかと、この『女の中にいる他人』を見ると思えてくる。

最も分かりやすいのはやはり小林桂樹新珠三千代に浮気を告白する場面および殺人を告白するトンネルの場面だろう。とりわけ後者における照明演出の過剰さには言葉を失う。トンネルの外の光をバックに浮かび上がる新珠の顔面のクロースアップ。美しいはずの新珠の顔がここではまるで宇宙人じゃないか! サスペンスに挑戦した成瀬は石井長四郎との協力によって、それをそこらの表現主義映画やフィルム・ノワール、ホラー映画が束になっても足元にも及ばない照明の劇として成立させたのだ。

花火と新珠のカットバックにもたまげるし、遊園地やラストの海辺のシーンも図抜けている。成瀬の遊園地と海辺にハズレなし!

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)寒山拾得[*]

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