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[コメント] リップヴァンウィンクルの花嫁(2016/日)

ある種のファンタジーながら、物語はいたずらに現実らしさを踏み越えない範囲で運用されている。それにもかかわらず「長大な上映時間」だけでは説明のつかない(むろん、主因ではあるだろうが)得体知れずの著大なスケール感に圧される。このあたりの印象は安藤桃子0.5ミリ』と相通ずるものがある。
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**ネタバレ注意**
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物語は観客をあてどなく連れ回すようでいて、得も云われぬ安定感があるようでもある。婚葬のシーンで作劇のモードを転ずるなどはトラディショナルな方法で、転居・転職によって具現化されるところの「受難」「流転」の劇、あるいは「異界への漂流と冒険」の劇として型を保っているあたりが所以だろうか。

物語の類型、ということでさらに云えば、これは一種の「契約譚」でもあるだろう。最も重大なのは当然「黒木華-綾野剛」「Cocco-綾野」および綾野を介した「黒木-Cocco」の契約関係だが、彼らに留まらず『リップヴァンウィンクルの花嫁』の作中人物同士はみな(親-子を例外として)雇用・労働・サービスの売買・婚姻などの契約に基づいて関係している。契約の履行、それは人が能動的に動かなければ果たされないはずだが、契約を結んだ瞬間から意志を越えて自動的になされるようでもある。そのような契約の物語としての徹底性(終盤においてそれが破綻したと見るかどうかは観客各人に委ねられるだろう)もまた、この映画に独特の作劇感覚に与っているだろう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)週一本[*] けにろん[*] ペペロンチーノ[*]

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