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[コメント] フライト・ゲーム(2014/米=英=仏=カナダ)

電子メールの文面を都度画面に浮かび上がらせる演出がどうにも格好悪い。その工夫の施しようには理解を示したいが、野暮の度合いは却って増してしまっている。秒単位で交わされる文字テクストに拠ったコミュニケーションをどのように表象すべきか、いまだ映画メディアはその決定的方法を発見していない。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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おおよそ中盤あたりだったろうか、いよいよ事態が平静でないことを確信して不安と焦燥に駆られた乗客たちがリーアム・ニーソンに詰め寄り、機内はパニック寸前に陥る。進退きわまったニーソンは「皆様、向こう十二ヶ月間国際線の乗り賃を無料に致します。航空会社が保証します。タダです。着席して静粛にしていただければ、ですが。ロハですよ。ご静聴ありがとうございます」という意味の文言を激しい口調で喚き散らし、乗客を黙らす。全篇にわたってじりじりした緊張感をよく保ったうえで、さらにこのような喜劇的一場面を差し挟むことができるというのは大いに好感が持てる。

その他のいくつかの見どころについては詳述を避けて、一点だけ、最も感動的な演出に関して記しておこう。終盤、正体が露見したスクート・マクネイリーとニーソンが対峙する。マクネイリーは拳銃を片手にニューヨーク市警コリー・ストールを人質に取っている。爆弾の爆発も迫る。絶体絶命のピンチ。そこに機体の高度降下に伴う無重力状態が発生、ニーソンは空中に浮揚した拳銃を掴み取ってマクネイリーを射殺する。この「宙に浮かぶ拳銃」のイメージがほとんど夢か幻のような一瞬間として撮られている。総じては好篇とでも呼んでおくのが似つかわしい出来の映画だと思うけれども、ここで重力さえも自在に操ってしまったジャウム・コレット=セラの演出力には率直に恐れ入ってしまう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)G31[*] けにろん[*] ゑぎ[*]

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