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[コメント] レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦―(2009/中国)

渡河・上陸作戦を描く映画に課されるはずの空間演出を疎かにしたまま「炎」による画面の粉飾のみで乗り切ろうという魂胆が戦争映画としての志の低さをよく物語っているが、待ち構える敵に向かって前進することの困難については『プライベート・ライアン』以降の映画が越えるべき最低限のラインに乗った描写か。
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しかしこれはせめて九六分間に収めるべき映画だろう。ラストの拍子抜けも上映時間の短い映画でなら許される類のものかもしれない。しかし私は、たとえばヴィッキー・チャオのシーンはことごとく不要だ、などと云いたいのではない。漫画のような彼女の活躍も盛り込みつつ九六分間の映画を仕上げようとするのが心ある演出家の態度ではないか。要するに、不要なシーンが多いという以上に、ひとつびとつのシーンが長すぎる。言語的/説明的である。まず「これからこういうことをやりますよ」と言語的に説明がなされ、画面は「絵解き」としてそれに追従する。

ダサい演出は無数にある。一分間に四つくらいある。しかしそれは同時にチャーミングなものであるのかもしれない。前篇同様に阿呆らしさの魅力には捨てきれないところがある。集団で盾を固めてもぞもぞ前進するシーンとか。トニー・レオンのスター性、金城武の余裕こいた態度、曹操チャン・フォンイーの人間臭さ、趙雲フー・ジュンの今にも泣き出しそうな顔など、役者を好意的に見ることもできるし、先ほどは「画面の粉飾」などと厭味な云い方をしたけれども「炎」のスペクタクルもやはり興奮はする。

(評価:★3)

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