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[コメント] 東南角部屋二階の女(2008/日)

16mmフィルムからブローアップしたかのような(というか本当にそうなのかもしれませんが)粗い粒子を持つスタンダード・サイズの画面。その画面構成力はまったく新人離れしており、天然の才能だけではこうはいかない。勉強の成果だろう。カッティング・イン・アクションやフレームイン/アウトの仕方。
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**ネタバレ注意**
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西島秀俊の圧倒的なポテンシャルを痛感する。西島の無表情があたりに波及させる緊張感こそがこの映画を支えていると私には思えるのだが、そもそもこの無表情、何を考えているのかまったく分からないというのが凄い。クレショフの名高いモンタージュ実験を引き合いに出すまでもなく、そこにショットの連なりさえあればたとえ無表情の顔でも何らかの感情を示しているかのように見えるものであり、さらに劇映画にはドラマの流れというものがあるのだから、無表情の奥に秘められた感情はよりいっそう特定されやすくなる。だがこの西島は何を考えているのやら本当にさっぱり分からないのだ。凶行に走ったときの西島の怖ろしさを私たちはすでに『蟲たちの家』や『LOFT』で思い知っている。だから私たちは加瀬亮らが西島に圧力をかけるたびに「わわあ、あんまり西島を追い詰めるなよ。西島がキレたら映画なんて簡単にぶち壊しちゃうんだから」と妙な感情移入をすることになるのだが、そういったわけでタイトルロールを演じていたことが後半に明らかになる香川京子をはじめとしてこの映画が抜群のキャスティングを誇っていることに異論はないものの(竹花梓だけはちょっと期待に届かなかったのですが)、私にとってこれはとてもとても怖ろしい無表情の西島の映画なのだ。

(評価:★4)

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