[コメント] サン・ジャックへの道(2005/仏)
粗を探そうとすればいくらでも見つけることができる。しかし、感動的だ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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たとえば、そのもっとも大きな粗とは「仲の悪い三人の兄姉弟が遺産を相続するために全行程一五〇〇キロメートルの二ヶ月間にわたる徒歩巡礼の旅に出て、衝突を繰り返しながらも次第に和解していく」という物語であるにもかかわらず、その時間と距離の〈長さ〉が表現しきれていない点だ。
いや、〈長さ〉は「リズミカルなカッティングによってめまぐるしく移り変わる美しい風景」などによって表現されているのかもしれない。 したがってこの映画の瑕疵についてより正確に云うならば、それは、登場人物らの「果てしなく歩き続けている、という感覚」がたかだか俳優の演技といったものによってしか表現されておらず、およそフィルムに定着しているとは云い難い、ということになるだろう。
しかし、そのような一見致命的な欠陥がありながらもこの映画がじゅうぶんに感動的な作品となりえているのは、「ある難事に立ち向かっていく過程でなんらかの再生や回復が果たされる」というきわめて古典的な物語のフォーマットに、程よくいいかげんな態度で則っているからではないだろうか。この程よいいいかげんさは、あるいは大らかさと云い換えることもできる。そして、それはまず人物と風景に注がれるまなざしに現れている。
この大らかさを女性的とか母性的と呼んでしまうのは安易に過ぎるかもしれないが、やはり感動的であることに変わりはない。
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