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[コメント] 叫(2006/日)

これは風景論・時間論/記憶論として語られる悲痛な愛の物語なのだから、単に『回路』『CURE』の焼き直しと見做すことは不当だ。とは云え、やはり刺激的な諸イメージを愛でることがこの映画と対する仕方としてはとりあえずふさわしいだろう。ま、それが「いつもの黒沢映画」と云われてしまう所以なんだけど。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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幽霊演出は他の追随を許さない。飛行や盥ダイヴも凄いが、葉月里緒菜がきちんとドアーを開けて退場していくシーンには心底たまげた。映画のテーマに直結するロケーション撮影もすばらしい。署内の造型に至ってはほとんどウェルズ審判』だ。「鏡」や「水面」の使い方の精度の高さも見逃せない。

また「ワンカットであること」に対する執着は飛び降りや自動車との衝突など随所に見られるが、ラストにおける無人の街をゆく役所広司のカットは、たったワンカットで世界の終末を暗示させている。それは『回路』が数十分をかけて表現していたものではなかったか。これが映画作家としての進歩でなくて何であろう。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)MSRkb ナム太郎[*] おーい粗茶[*] shiono[*] ペペロンチーノ[*] セント[*]

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