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[コメント] 遠い国(1954/米)

「雪」の、と云うよりもアンソニー・マンらしい「山岳」の西部劇。雪崩のカットには心底ビビる。ここでも映画の良心はウォルター・ブレナンであり、彼と少女コリンヌ・カルヴェが中盤までの楽しげなムードを支えている。悪役ジョン・マッキンタイアも紳士的な極悪人といった感じで魅力的だ。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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ブレナンの死のあっけなさには心を引き裂かれる。おしゃべりをしているブレナンと背後の稜線に現れた敵を同一フレームに収めたカット。空間の高低と前後を活かした見事な画面であり、その同じカット内であっという間にブレナンが撃たれてしまうという簡潔さに涙が落ちる。続いて蜂の巣にされるジェームズ・スチュアートの姿も痛ましい。

鈴の音の演出も繊細ですばらしい。鈴が鳴ること、それはマッキンタイアら敵方にとってはもっぱらスチュアートの接近を意味しているわけだが、同時に私たち観客には、カルヴェに鈴の来歴について語っていたブレナンの姿を思い出させることになる。その鈴をドアーにつけたユタの家で、スチュアートと共に悠々と余生を送るつもりだったブレナン。その彼がもうこの世にいないという哀しみ。優れた作家は音ひとつでこれだけ映画に奥行きを与えることができるのだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ゑぎ[*] 袋のうさぎ

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