コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 黄金時代(1930/仏)

ブニュエルの原液――豊かな着想、強烈なイメージ、その自由な連鎖。一度見たらもうそれを見る以前の自分と同じではいられなくなる、つまり人生を変えてしまう映画。と云ってもそれは大層なことではなく、たとえば、私たちはもう『黄金時代』を思い出すことなしに「サソリ」を見ることはできないということ。
3819695

(イメージの鮮烈さや強度を度外視すれば)物語を進めるにあたってもっぱら言葉に頼った下手な映画を音声や字幕なしで(=言語的情報を遮断して)見ると、この映画と近い感触を得られるかもしれない。物語すなわち「作中人物の諸行動・諸カット・諸シーンの間の因果関係」がまるでないわけではないが、それは一般的な劇映画の仕方で説明されることがない。要するに「意味」が確定されない。だから、これはサスペンス映画だ。意味に縛られたい観客を不安の中に置く。宙吊りにする。と同時に、見る者を意味から解放するという点で、これはとても心地よい映画でもある。私たちはただ、犬が蹴り上げられるさまやベッドに横たわる牛やガストン・モドの表情の間抜けぶりに笑い、驚けばよい。

 コテージの首領格の男は「百頭女」のマックス・エルンスト

 自身のオールタイム・ベストのひとつに挙げるほど『黄金時代』が好きだというアキ・カウリスマキ。学生時代にはこの映画についての論文まで書いたのだそう。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。