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[コメント] 突然炎のごとく(1962/仏)

物語やキャラクタに納得できるか、などということ以前にカッティングの心地よさだけで見せられてしまう。「自転車」や「橋」といった映画的細部によって活力を与えられた画面と物語は実に瑞々しいが、それを行う手つきはきわめて巧みだ。「新しい波」とは当時において誰よりも古典を知る者たちの運動だった。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







三つの点があるとする。一直線に並んでいない限りにおいて、その三点を結べば必ず三角形ができる。それは正三角形であるかもしれないし、二等辺三角形であるかもしれない。あるいはもっといびつな形であるかもしれないが、ともかく三角形である。この映画においては、それはむろんジャンヌ・モローオスカー・ウェルナーアンリ・セール、という三つの点が形成する三角形なのだが、その三角形はたったひとつの台詞や動作によってさまざまに変形させられる(もちろん「三角形であること」は維持したまま)。『突然炎のごとく』における「物語」とは、つまりはこの三角形が絶えず変形してゆくさまのことであり、以上のような意味において、ここでの作劇は幾何学的、とまでは云わずとも多分に理知的なものであるだろう。しかしながら、結末部において二点は唐突に消滅してしまう。残された一点はもはやどのような図形を形成することもできず、単なる「ひとつの点」でありつづけなければならない。その「ひとつの点」たるウェルナーが抱くものは、もはや孤独感であるとかそれに類する通俗的な感覚を示す語では決して規定しえないものだろう。

(評価:★4)

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