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★4私が、生きる肌(2011/スペイン)変態映画変態映画と世の民は盛んにこれをそう呼ぶらしい。なるほど変態映画である。しかり変態映画であると私も思う。ただの変態映画ではない。たいへんな変態映画であると云ってもよい。しかし今一度立ち止まって考えてみるに、これの何がそれほどまでに変態映画なのか。お話かしら。否。語り口である。 [review][投票(3)]
★4ファウスト(2011/露)アレクサンドル・ソクーロフ式スラップスティック・コメディ。敢えて文学の話をすれば、印象はゲーテというよりもカフカに近い。「執拗なつきまとい」も「取っ組み合い」も優れてカフカ的モティーフで、きわめて明晰な各瞬間の描写がいつの間にか常人の理解を越えた論理展開を示している点もカフカ的だ。 [review][投票(3)]
★4月と少年(2011/米)併映短篇とは対照的に反-言語の態度が鮮明である。月をチーズで拵えるなど荒唐無稽を極めた『チーズ・ホリデー』ですらロケットを用いねば月面に到達できなかったところを、こちらは「小舟」「錨」「梯子」で成し遂げてみせる。素朴かつラディカルな発想でデザインされた映画世界が出所不詳の郷愁を誘う。[投票(3)]
★311・25自決の日 三島由紀夫と若者たち(2011/日)いちいち絵に描いたようにファナティックな満島真之介のヤバ度は九〇を超えている。井浦新による三島由紀夫像も発明的に新しい。ただし、ここで「新しい」とは正負いずれかの価値を持った評価語彙ではなく、単純に事実の指摘である。映画の質感は伝記的である以上に三島・森田の変則バディ・ムーヴィだ。 [review][投票(3)]
★4孤島の王(2010/ノルウェー=仏=スウェーデン=ポーランド)製作および本国での公開年を鑑みれば、世界情勢(アラブ諸国における民主化運動)と歩を合わせた『猿の惑星 創世記』に先んじる「革命」の映画だと云えるだろう。もちろん、両作ともカリスマ的なリーダを擁している点において、あくまでも前代的な革命を描いているとの但し書きは必要かもしれないけれど。 [review][投票(3)]
★3ドライヴ(2011/米)これは本格的にダサい。特に昇降機のキスシーンが悲惨。取り沙汰するべきは技術以上に、技術の用法を方向づける演出家の美意識だ。キャリー・マリガンの打擲にあのような軽い音を当てながら平然と居直ってしまえる鈍感神経は積極的に滅ぼしたい。突発的な暴力の演出も二回目以降は見切れてしまって倦む。[投票(3)]
★4TIME タイム(2011/米)ジャスティン・ティンバーレイクアマンダ・セイフライドは清潔感があって素敵度の高い好男好女だが、両名のカップリングがもたらすときめきは最大ではない。むしろティンバーレイク×オリヴィア・ワイルド、セイフライド×キリアン・マーフィの組合せのほうが夢は大きい。しかり、私は夢追い人である。 [review][投票(3)]
★3サラの鍵(2010/仏)たとえば序盤の何気ないシーン、病床の義祖母が「『テザック夫人』と呼ばれうるのは私だけだ」とクリスティン・スコット・トーマスの呼び名を米国風に訂正する場面ですでに周到に提示されている通り、ともかくも「名前」の物語である。人を探すこととは、その名の持ち主を探し尋ねることにほかならない。 [review][投票(3)]
★3月世界旅行(1902/仏)書割芝居にすぎないが書割自体のデザインは面白い。換言すれば、画心はないが絵心はある。砲弾型ロケットを発射台に押し込める女性たちの衣裳がむやみに肌を露出させていてマック・セネットのベイジング・ビューティーズのよう。あるいは単に観客の欲求を満たそうとするジョルジュ・メリエスの興行魂か。 [review][投票(3)]
★3トワイライトゾーン 超次元の体験(1983/米)オムニバス作品となれば各篇の優劣を問うのが人情か。ダン・エイクロイドアルバート・ブルックスによるプロローグが最もマシであると云う人がいても私は不審に思わない。「ドラマ主題曲の当てっこしようぜ!」との台詞から予想される展開・結末と寸分違わぬ光景が繰り広げられて早くも達観の境に至る。 [review][投票(3)]
★5勝手にしやがれ!!黄金計画(1996/日)黒沢清の最も幸せな映画。闊達自在に躍動する藤谷美紀はシリーズ最良のヒロインだ。彼女が歌う「車にゆられて」は『ドレミファ娘の血は騒ぐ』よりも遥かにミュージカルらしい幸福感を呼び込む。前田耕陽も著しい成長を見せ、哀川翔との黄金コンビはここに確立する。大鷹明良の奇矯な造型も普通ではない。[投票(3)]
★4この愛のために撃て(2010/仏)すべて彼女のために』はまぐれ当たりではなかった。呆れるほどに面白いシーンを複数持っている。このフレッド・カヴァイエにしても、またはピエール・モレルにしても、面白さにおいて映画史が頂点を極めた「七〇年代アメリカ映画」に果敢に挑む純粋娯楽アクション作家が育っている仏国を羨ましく思う。 [review][投票(3)]
★4アジョシ(2010/韓国)百万遍も繰り返された物語、ほとんど神話である。ゆえに勢力図はむしろもっと単純でよい。代わりにウォンビンの遁世理由と卓越した暴力技術の因果関係を強化して、暴力への疑義を持たせたい。これでは簡単に強さを見せすぎである。が、『許されざる者』でなく『96時間』を目指すというのなら話は別だ。[投票(3)]
★4監督失格(2011/日)固有名詞に彩られた、どこまでも具体的で個人的な物語が、いつしか普遍的としか云いようがない風景に至る。床置きカメラが捉えた、事態をまるで弁えぬ犬のはしゃぎぶり。そしてラストシーン撮影直前の監督を襲ったぎっくり腰に私は決定的に動揺する。作為の演出では絶対に到達不可能な、奇跡的な映画性。[投票(3)]
★3世界侵略:ロサンゼルス決戦(2011/米)画面の窒息に伴う状況把握の困難をリアリティの詐称の下に正当化する企ても、創意を忘れた演出が誇る催眠効果の前では空しい。交戦の個々で小隊は常に互角以上の戦闘を演じるが、絶望感の不足はむしろモブシーンの欠如に由来する。彼らは壊滅した街や基地を目にはしても、自らの身でどん底を経験しない。[投票(3)]
★3キッズ・オールライト(2010/米)その類稀なルックスが却って役柄の幅を狭めてしまわぬかと懸念されたミア・ワシコウスカだが、至って普通のお嬢さんを実に魅力的に演じている。私は『アリス・イン・ワンダーランド』よりも、表情の変化ぶりを見ているだけで愉しいこちらのほうを買う。ジュリアン・ムーアもよい年齢の重ね方をしている。 [review][投票(3)]
★4イリュージョニスト(2010/英=仏)ジャック・タチは本当に自らをこのタチシェフに重ねていたのか、「タチシェフ」がタチの本名であることを鑑みても、彼の映画のファンからすればそれは大いに疑問だ。なぜなら彼は決して時代遅れの芸人などではなく、最先端の映画作家だったから。そして彼もまたそれを誇りにしていただろうと思われるから。 [review][投票(3)]
★3ツリー・オブ・ライフ(2011/米)この画面に対する評価語彙として適切なのは「美しい」ではなく「鮮明」である。その鮮明さは、映画が観客の瞳に届くまでに介在する幾多の機材の性能を証しこそすれ(映写機/プロジェクタを含め。私が見たのは明らかにDLP上映でした)、撮影部・演出部の労働が高い技術を誇っていることを意味しない。 [review][投票(3)]
★4大鹿村騒動記(2011/日)可愛い人たちの映画。ワイルドであること、タフであること、マッチョであること、それらを自らに課すかのような原田芳雄の振舞い、しかしその表面から透けて見えるのは繊細な優しさとピュアーな幼児性だ。この掛値なしの可愛げの源泉を演技技術ではなく人格に求めるのは、今や感傷的すぎる行いだろうか。 [review][投票(3)]
★4奇跡(2011/日)「にしても大それた題をつけてくれたのう。向後はいちいち是枝裕和の『奇跡』やらカール・ドライヤーの『奇跡』やら云わねば話が通ぜぬようになるのか。ええかげんにさらせよ。だらあ」という猛り狂いの矛を収めうる程度にはよい映画で、劇場を後にする私はむしろ恵比須顔を浮かべていたとかいないとか。 [review][投票(3)]