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[コメント] マイ・ブルーベリー・ナイツ(2007/仏=中国=香港)

箱庭のアメリカとグッドルッキングメンの牽引力
のらぞんざい

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この箱庭的閉塞感はある意味すごい。

これぞウォン・カーウァイだ!と間違って誉めてしまいたくなる。

まったくもってロードムービーたらんとした気配がない。

わざわざテロップでデカデカと「○○マイルまで来たヨ!」と表示されるにも関わらず、

その距離感を、ロードムービーらしい時間と空間の奥行きを画面から感じることは最後までできない。

すべてがこれ箱庭での出来事。

ウォン・カーウァイが描いたのは箱庭のアメリカ。

けれど、それがすべて悪い方向にいってるわけでもなくて、

例えば冒頭のジュード・ロウとノラ・ジョーンズのカラミなんかはすごくいい。

密閉された空間としてのバーに漂う、独特の緊張感、孤独、色気と気だるさ。

二人のなんでもないやりとりにも濃密な時間が定着していると思う。

ああやっぱりこれはウォン・カーウァイの映画だ、と認識する。

この人は閉じた空間で人を描かせるとどういうわけか抜群に良い。

極端なクローズアップや監視カメラ・電話の使い方も冴えてると思うし、

ノラの唇についたクリームをジュードがキスで拭き取る所作の反復なんか素晴らしく映画的だ。

しかし、このジュード・ロウはいい。

それは単に美男子だから、グッドルッキングメンだからというのも多分に影響しているのだろうけど、

にしても彼が出ると途端に画面が締まる。

むしろ僕はノラ・ジョーンズが長い間撮られていると

「ジュード・ロウまだかな」と退屈してしまった感すらある。

(この映画のノラ・ジョーンズは良いところと悪いところが混在する。)

某映画評論家が俳優にはカメラに愛されるものとそうでないものがいる、とか言ってたが、

少なくともこの映画での彼はカメラに愛されていると思う。

やはりカーウァイの独善的なナルシシズム、ロマンチシズムにはグッドルッキングメンがよく似合う。

ただ、この二人のカラミのあとがつらい。

正直、デヴィッド・ストラザーンのパートもナタリー・ポートマンのパートも

たいしておもしろくない。

ナタリー・ポートマンの話はどう考えても消化不良だし、

行き当たりばったりで話を作っちゃうウォンカーウァイの悪いクセが出てる。

デヴィッド・ストラザーンのパートも

「アメリカ映画的」であることを意識し過ぎている気がして凡庸だ。

オーティス・レディングの使い方ももったいない。

で、ジュード・ロウに戻るとやはり俄然良くなる、と。

元恋人とジュード・ロウとのカラミもこれまた絶品。

ここだけトニー・レオンとマギー・チャンのカラミみたいだ。

ラストはこれしかなかったと思えるシメ方。これもカーウァイらしい。

総じて、アメリカに行ってもカーウァイはカーウァイであるということが、

良い意味でも悪い意味でも確認できる映画ではありました。

(評価:★3)

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