[コメント] 欲望(1966/英)
写真家の視線の傲慢さを、安全な位置から眺めることのスノッブな愉悦。視線を見る視線の往復運動によってオブジェクトを発見したように、テニスボールの往復運動に目を凝らすことによって彼は事件の真相に到達するのである。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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エンディング、パントマイムのテニスシーンで、なぜかボールを打つ音がしている。それは主人公のアップに移行するとさらに顕著に、はっきりとした打ち合いのサウンドとなる。
写っていないはずのものが写っていたように、写したと思ったものは実は写ってはいないのかもしれない。写真という冷徹なメカニズムが持つ特権性を、この期に及んで彼はようやく自覚したのかもしれない。
とかなんとか言って、デヴィッド・ヘミングスの脳裏に「こいつらがあの男を殺したんじゃねーの」という根拠のない疑念がムクムクと沸いてきた、というふうに見て見れなくもない(白塗りの集団は『ウォリアーズ』のように攻撃的に見えるし、確かにラストカットで主人公の姿もまた口封じのために「消される」)。
この二つの解釈は排他的ではなく、同時にフレーム内に存在している、と考えていくとおもしろい。いずれのアプローチからも、世界と自我を巡る興味深い主題が導けそうな気がするからだ。
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