[コメント] 八月の濡れた砂(1971/日)
主人公たちが輩どもからオープンカーを奪い取るシーンを見てみよう。村野武範が飛び乗り、手持ちカメラが四人満車の座席を撮って、そのまま180度パンして追いかけてくる連中を捉えている。トランクの上に載ったカメラマン=観客が、五人目の仲間のように感じられる。
終盤のヨットの狭いキャビンでも、よく動くカメラがロングテイクをものにしている。アクションが伴うシーンでは、こうした主体的なカメラワークが見られるのだが、これが計算されたものというより、撮影を楽しんでいるかのような雰囲気が実に痛快。キャストスタッフが映画にかこつけて自分らの青春をやっているようだ。
自己満足的にテーマを語るわけでもなく、観客に媚を売るでもなく、この絶妙な距離感が結果としてうまくいっているのだから、理屈ではなくおもしろいとしか言いようがない。
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