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[コメント] つぐない(2007/英)

ジョー・ライト作品の魅力は、英国文学の香りを生かしつつ現代的な活力をもって描写するエンタテイメント性にある。見る者と見られる者を自在に操る時空間の演出は、逸材シアーシャ・ローナンをいっそう魅力的に見せていた。
shiono

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たいするに、物語が進むにつれ気になってきたのは、ジェームズ・マカヴォイのオーラの無さ。良い意味でのハリウッド風エンタテイメントに必要なのはスター性なのだ。その顔といい存在感といい、記憶に残らない主人公というのは見ていて退屈する。

そのマカヴォイとキーラ・ナイトレイとの図書室でのラブシーンも違和感がある。幼馴染で階級の違う男女が初めて恋を意識する瞬間という、少年少女が特権的に持つメンタリティを演じるには、二人のルックスは老けすぎる。特にローナンとナイトレイの姉妹の年齢差は気になりだすと止まらない。

四年後のヨーロッパ戦線では驚愕のロングテイクに動悸がしたが、ロモーラ・ガライの造形には失望した。ローナンの瑞々しい透明感とはかけ離れた鈍重さに、こんなのブライオリーじゃない!と叫びたい心境だ。結婚式におけるフラッシュバックのモンタージュで表面的な造作の類似を見せ付けられても空しいだけ。このキャスティングでこの作品の魂は失われたといっていい。

プロフェッショナルが熟慮を重ねてキャストした役者が期待に沿わないというのは、役者本人にとっても気の毒なことだ。逆にシアーシャ・ローナンが良すぎたとも言える。ライト監督のストーリーテリングはさらに巧くなっているだけに、俳優陣の相互作用の機能不全は実に惜しい。

(評価:★3)

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