[コメント] カンナさん大成功です!(2006/韓国)
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変身というプロットから容易に導き出せるストーリーをこの映画は踏み外す。人の見る目というのは鏡に等しく、普段、人は他人を通じて(社会的な)自分の姿を見ている。容姿のせいで表現欲求を抑圧されていたカンナが美貌を手に入れたら、普通ならば他者からの注目に酔うはずだ。しかし、術後こそ浮き足立つ彼女だが、圧倒的な開放感に満たされ突き進むことはない。カンナは依然として自分に自信がなく、その上美容整形を行なったことへの後ろめたさも抱えてしまう。
手術後から芸能界デビューまでの長尺で描かれるのは、寄って立つところのないカンナの不安定な心理である。歌唱の才能を表舞台で発揮するよりも、サンジュンに近づくことしか眼中になく、かつての自分のような立場の者には強いシンパシーを示す。人物相関上のライバルであるアミへの対応も消極的だ。なにかというとすぐ泣いてしまう彼女は、日本女性からしたらやきもきして見ていられないのではないか。もっとハジけたらいいのに、と。逆に男性目線からしたらいじらしく可愛らしいとも言える。
カンナがステージですべてを吐露するシーンが感動的なのは、父の存在があるからだ。彼女は父の姿を経由してのみ、アイデンティティを認識できるのである。ここがおもしろいところで、この映画のヒロインは、クライマックスにおいて、ようやく自己探求や自己表現の可能性に辿り付くのだ。ハリウッド映画がそれらを主たるテーマにしてきたのとは対照的である。この保守的なベタさ加減が実に新鮮で、随所にちりばめられた小技と相まって、味わい深いコメディになっている。
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