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[コメント] クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦(2002/日)

アニメらしからぬ合戦の生々しさが素晴らしい一方で、お姫さま・お侍さまのラブロマンスにまとわりつく消毒臭が鼻につく。
パグのしっぽ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まず前提として、本作は時代考証の踏み込み具合、野原一家を置いてけぼりにしたストーリー展開、抑制の効いた演出からもわかるとおり、そもそも子供を相手にしていない。「子供よりも大人が観て泣ける、知る人ぞ知るアニメ映画」というカッコイイ立ち位置を最初から明確に狙って製作されたのだと感じる(結果として、本作品はその評価を得ることに大成功したのだが)。そういう色眼鏡をかけて大人の見方で観賞してみると、本作の清廉さが鼻について仕方がない。フィクションにせよ現実の話にせよ、大人の恋愛の一番美味しい部分って、もっとドロドロぐちゃぐちゃした部分にあるのだと私は考える。身分の差を超えた愛?本作中の二人は戦国の恋愛の掟にとっくに納得していたのではないのか?お殿様の心変わりでお姫様の縁組がご破算になっただけであろうに。また、何よりも終盤が気に入らない。これからいよいよ二人は戦国の掟に逆行し、身分の差を乗り越えるためのドロドロな戦いへ一歩を踏み出そうというところで、男は悲劇の死を遂げるのである。これをすがすがしい恋愛物語として捉える見方もあろう。しかし、私はそのすがすがしさに作者の綿密な消毒の痕跡を感じてしまい、どうしても美味しくいただけない。結局この作品の魅力って「子供のくせに大人顔負けのトークをする小学生タレント」みたいなギャップに尽きると思う。でも、大人の世界には甘さ・爽やかさ以外にも子供には分からない美味しい味覚がたくさんあるのだ。『クレヨンしんちゃん』は本来、その辺の旨みを味わえる作品だと思っていたのだが、何を間違えて本作のような方向へ走ってしまったのか。

(評価:★3)

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