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[コメント] マイ・バック・ページ(2011/日)

今までにないビッグキャストを揃え、大作の装い。山下敦弘監督の持ち味が失われるのではないかと心配していた。しかしそれは杞憂。いやむしろ、より一層冴え渡っている。
パグのしっぽ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







学園紛争を直接語るのではなく、そこに「遅れてきた男」と「早過ぎた男」の視点を通して、それを周縁から浮き上がらせる。この手法により、紛争の思想・熱気だけでなくそれが収束した後の虚無感まで描き出してしまった。革命のための暴力は肯定されるのか、権力のロボットを殺すことは正義なのか、学生運動の渦中で何度も繰り返されてきたであろう問いに対して、渦の中心から外れた事件を素材に答えを出そうとする(しかもその答えは、革命理論など全く知らないであろう女子高生の口から語られる…!)。一ひねりしたテクニックに挑むバイタリティ、そしてそれを成功させる技量、山下敦弘監督が今まで魅せてきたパフォーマンスが妻夫木やマツケンみたいなトップスターを迎えてもいかんなく発揮されていることに、敬意を表します。もっとこの監督の作品が見たい、と心から感じる。

作中にも登場する京都の大学には、今日でもアジテーション看板が立っている。アニメやテニスサークルの新歓看板に囲まれて。それは大学の風景を彩るアクセサリーの一つでしかない。今まではこの様子を見て、21世紀になると革命もファッションの一部になってしまうのだなぁと感じていた。しかしこの作品を観ると、そういう流れは30年前には既定路線になっていたのだと、妙に納得してしまう。

(評価:★5)

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