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[コメント] 孤高のメス(2010/日)

よく言えば重厚だが、ただテンポが悪いだけに感じた。ベタで一直線のストーリーで、入り組んだ箇所もないのにこの長さ、内容と見合っているとは思えない。医療ものの作品を今作るならこんなきれいごとだけじゃなくもっと問題提起すべきことが沢山あるのでは。
agulii

**ネタバレ注意**
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一定のクオリティを保っているのは認めるが、見かけだけ重厚=深みのある作品という印象で評価される というかんじで、個人的に全然好きになれない作品だ。 ストーリーだけ見れば二時間ドラマで十分な内容だし、映像的にも見どころがあったようには思えない。

ストーリーも、悪役の暗躍を時間をかけて描いている割には、結局あっさり成敗されてしまい、肝心の先生を少しも脅かしているようには見えない。先生の周りには少し影響を及ぼしていたが、先生本人に全く揺らぎを与えないから、役として弱い。 マスコミが出てきてもやっぱり揺らがないし、だったら悪役はいらないと思った。 何事にも揺らがない先生、という性格描写のためにつけたんだとしても、あんなに時間をとって描写する意味があるか疑問だし、悪役のための悪役というかんじで好きになれない。 また、ラスト付近で手術する患者が権力者という設定も、先生はそういうつもりではないとわかっても、ストーリー全体としては権力者を助けるためなら無理が通る、としか見えない。 (実際、彼の権力について言及しつつ手術するかどうか議論するシーンもあった) 実話ではないし、どっちにしろ無理のある展開も多いのだから、一般人が患者ということにしたほうが引っかからずに済んだと思う。

また、人とのつながりのようなありきたりなテーマをセリフやナレーションで何度も説明されて萎えた。その他、セリフやナレーションで説明しているところが多すぎる。

演出面で疑問だった箇所がある。 ラストの手術のとき、先生はいつも通り演歌を流す。 そこにBGMとして子供の合唱が重なる。 フェードインとフェードアウトとはいえ、音楽を2つ重ねるのは純粋に気持ち悪くてどうかと思うし、手術中に演歌を流す変わった先生、というこれ見よがしにわざとらしい設定をつけておきながら、肝心なときには「演歌では盛り上がりきらないから、感動ものっぽいBGMに差し替える」というのは姑息としか思えない。 そういう設定を作って演歌を実際に流すところまで描いたのだから、映像の力で演歌がBGMのまま盛り上げるか、それとも演歌を流す描写や設定を削るか、せめて無音で行くべきだと思う。 子供の合唱シーンもストーリーに全く関係ないし、演歌の代わりに姑息に流したのをごまかすのための映像としか見えなかった。

一番気になったのは 医療問題は山積みなのに、わざわざ昭和を舞台にした美談を映画化する意味とは、ということだ。 全ての映画が社会派であるべきとは思わないが、この映画はいかにも重厚で医療問題にも触れてますよ、という外見をしておきながら、ただのきれいごとを描いているだけだ。 いっそ、軽いエンターテイメントとして作ればそういうものとして楽しめたのにと思う。

(評価:★2)

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