[コメント] ドント・ブリーズ(2016/米)
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リメイク版『死霊のはらわた』では妹のドラッグ断ちのために山小屋に籠ることにした若者たちが酷い目にあうんだがゴアシーンが妙に自傷的で、スプラッター云々とは違った意味で痛々しい物語になっていた。
本作では、不況下のどん詰まりの街・デトロイトで、犯罪に手を染める未来のない若者たちが、老いた盲目の元軍人と暗闇の中で死闘を繰り広げる。低予算でワンシチュエーション、様々な技巧を駆使しながらも90分にコンパクトにまとめたスリラーという、いわゆる「映画的快楽」をストレートに味わえる(はずの)作りだが、いや確かに味わえはするのだが、ジャンル映画的「キャラクター」としては重すぎる……生真面目すぎる人物造形が、物語に拭いがたいダウナーな空気を醸し出す。例えば短気なクズだと思われたヒロインの彼氏が、自らの命が今まさに奪われんとするその一瞬に仲間たちを庇う。それをお涙頂戴的に過剰に描くことなく、他のキャラクターに英雄的行動だと賞賛させるでもなく、容赦なくばっさりと切っていく。全編そんな感じだ。
それでいて、ジャンル映画の枠から逸脱するような過剰さ、突き抜け、高揚……には踏み出さず、半歩手前くらいできちっと折り畳む(例の「体液」の下りでさえ、老人の狂気よりも絶望の深さのほうを前面に出した演出で、ある意味丸めて描いていると言えないだろうか)。器用なのか不器用なのか生真面目なのか、そういうところが妙に印象的だった。
(2017/01/12(木)TOHOシネマズ新宿にて)
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