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[コメント] I’M FLASH!(2012/日)

☆3.0。藤原竜也演じる人物の虚無感/厭世観が今ひとつうまく描けていない気がするが、間延びした不穏さとでも言うべき「何かありそう」感で最後まで引っ張る。一部時制をずらした語りが最後に綺麗にまとまるのも良し。だが……
MSRkb

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







だが、最後の最後、松田龍平のパートは蛇足だなー。全体的に、台詞は「うまいこと言ってやろう」として微妙に滑ってる感があり、そこは残念(教祖家族の台詞とか、アウトロー3人組の台詞とか……ダダ滑りではないんだがどうにも座りが悪い)。

見所は藤原竜也と松田龍平の演技勝負(?)なのだが、気張ってるところがどうしても見える藤原に対して松田が「弛緩した胡乱さ」をビンビンに発してて魅力的。最後の最後のパート、蛇足だとは思ったがこのキャラクターのスピンオフ的続編が見たいなと思ってしまった。なんかさ、ちょっとオフビートな通俗ハードボイルドでさ。ただ、藤原竜也が教祖としてに胡散臭いことをいい熱量で話してるシーンは良かった。また、水原希子とのドライブシーンで少々露悪的にヘラヘラ笑いながら「俺教祖、儲かるのよー」的べしゃりをするとこ(&手品)は良い。ていうかエロい。藤原竜也のああいうところはずっと見ていたい気分になる。

豊田利晃の映画、全てを見ているわけではないのでほとんど偏見だが、いつも九十年代末っぽい空気が漂ってる(出た! 空気! 便利な言葉!)。刹那的だけどノーフューチャーまではいかず、平坦な日常にぼんやりした不穏さが漂う。今作では、突発的で暴力的な悲劇があり、ぼんやりした陰謀があり、また暴力があり、光が訪れる。クライマックス、海の底から見える海面の光、病院で目を覚ます水原希子、交通事故の直前でたまさかの相互理解/受容を果たした藤原と水原のキス(そしてフロントガラスに広がる光、それは対向車のバイクのヘッドライトなのだが)……がカットバックされるシーン、そこにあるぎりぎり「救い」未満の平穏さは魅力なのだが、極感覚的な言い方を許してもらえば「90年代末によく探索されていた平穏さ」に見えた。それは時代とずれているというわけではなく、どこか懐かしさを感じるものだ。たぶん、テアトル新宿の夜の上映で見た、というロケーションも関係しているのだろう。

人にお勧めするかと問われればどうかなーと思うが、個人的には楽しめた。

2012/09/14(金) テアトル新宿

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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