血塗りのラブシーンで淳吾（浅野忠信）が花（二階堂ふみ）の下着をはぎ取るのが遅い、という点を除けば二人の情念がとても良く出た良作である。

大塩（藤竜也）を殺した花と田岡（モロ師岡）を殺した淳吾のその後の佇まいの違いなどは、覚悟を決めた女の強さと過去に拘泥する男の弱さの対比として完璧であった。淳吾がただただ呆然と「後悔・・」とつぶやくシーンは個人的に本作屈指の名シーンである。

後は熊切監督の閉塞感表現とでも言うか、袋小路にどんどん追い込まれていく人間描写の適切さが本作にも生かされている。それは地方の閉塞感であったり、堂々と表世界に出ていけないと感じている人間の閉塞感であったりするが、絶望的な状況にある人間描写がとにかくうまい。

近親相姦を描いているというだけで評価を落としているのだとしたら非常にもったいないと思う。人は選ぶが「渇き」ほどではないので、あまり食わず嫌いせず観てもらう事をお勧めする。

(2014.6.15 tohoシネマズ小田原)