題材はセンセーショナルなものではあるが、割とうわずみのドロドロ感に落ち着いた感がある。もっと辛辣な「値踏み」を互いにやらせるぐらいの悪趣味さが欲しかった。

もともと舞台演劇なのでセックスシーン自体不要な作りとなっているが、わざわざ踏み込むのならそこでしか表現できない事を組み入れるべきだと思う。しかし、特にそういう仕掛けがないのはもったいなかった。

コメディリリーフ的には意味があるカップルの「乱入」もちょっと余計だった。本作の魅力を損ねるわけではないが、冒頭で店長（田中哲司）が女子大生（門脇麦）に淡々と話をする内容が無駄になっているように思う。どっちか切っても良かったのではないか。

あと、店員（窪塚洋介）の最後も余計。そのような言うなれば「ハートウォーミング」な展開は本作に不要であろう。

正直、ハードルが上がりすぎたと思う。『冷たい熱帯魚』、『凶悪』のような欲望むき出しの人間が描かれた作品の後に、根源的な欲を描く割にはそこそこに落ち着く作品を観てもあまり響いては来ない。

（2014.3.9 ユナイテッドシネマ札幌）