[コメント] インポッシブル(2012/スペイン)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画が語られるうえで最大の力点が置かれるのは間違いなく、マリア(ナオミ・ワッツ)とルーカス(トム・ホランド)が巻き込まれる大津波のシーンだろう。色々なものが相当な速度で体にぶつかる、首に巻きつく、皮膚を切り裂く。その臨場感は強烈であり、良くここまでできたものだという一種の感心と東北震災で見た映像の「下」ではこういう状況になっているのかという恐怖が心情を支配する。表現として素晴らしいと思う。
その後の家族探索や病院でのあれこれは、実話押しをしている以上、すべて「上手い方」に転がることがわかっているから、臨場感・圧倒感は弱まってはくる。それでも、家族が再会するシーンは感動的である。という事で、概ね本作が描くべきもの、描こうとしたものは観客に伝わっていると思うので、良作ではあると思う。
しかしながら、どうしても気になるのが「チューリッヒ」である。
まぁ、実話なんでしょうよ。プライベートジェットみたいなのぶっ飛ばしてシンガポールでの「最高の医療」を提供したってのも事実なんでしょう。ただ、それこそ「鬼の首を取った」如くに「こんな時でも最高の顧客サービスを提供しますよ」とアピールしてくるのは違うのではないか。会社の仕事を否定する意図はない。そのサービスが大層「素晴らしい」のは疑いのない事実だが、この家族の裏に横たわっている膨大な数の悲劇を思い浮かべる時、その「商魂」に一種のやるせなさを感じたのもまた事実である。
「会えました、手術成功しました、スペインで無事に生活してます」で何が悪かったのか。
違った意味での「モヤモヤ」感を残す作品になってしまったことは、至極残念であった。
(2013.6.30 tohoシネマズサンストリート浜北)
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