[コメント] キッズ・リターン Kids Return(1996/日)
まったく自信なんぞないくせに、思いのほか物事が上手くいくと調子に乗ってすべてを自分の実力だと思い込んで……
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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私はこの映画に描かれるような若者だったのだと思う。だから失敗を繰り返すたびに、マサルの最後のセリフに救われてきた。
「バカヤロウ、まだ始まっちゃいねえよ」
この甘ったれで姑息なセリフのあと、マサルとシンジは照れたような複雑な笑顔を浮かべる。彼らだって、本気でまっさらな状態からやり直せると思っているわけではないのだ。もしかしたら自分も、あのガード下でシャドーボクシングをしていたホームレスのようになるのかもしれない。それでも今できることは、自分が精一杯歩んできた道を受け入れ、前に進むことだけなのである。
この映画に描かれる若者たちの中に、はっきりとした「成功者」は存在しない。ヤクザはどれだけ登りつめようがしょせん日陰者であり、ボクシングで日本のトップに立ったイーグルでさえ、最後には深く肩を落としてジムを去ってゆく。誰もが結果を求めながら、求めるべき結果にたどり着けないまま次の人生を歩み出す。
北野武は決して、「夢をあきらめるな」などとは言わなかった。ただ静かに、「挫折とは結果ではなく過程なのだ」と語りかけた。公開当時10代から20代に差しかかろうとしていた悩み多き(笑)私にとって、そのメッセージは何よりの救済だったように思う。
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