[コメント] 茄子 アンダルシアの夏(2003/日)
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ここに描かれたのは一連の出来事であって、生きた人物の行動ではない。何もかも全部結果論で、誰ひとりとして葛藤や選択の末の行動を起こしていない。誰もがただ成り行きのまま動いただけ。主人公はエースが倒れた時点でもう「そのまま踏む」以外の選択肢はないわけだし、最後に彼が圧倒的なスプリント力を誇る某や他数名の有力選手たちに競り勝った理由も判らない。競技スポーツの美しさというのは選手の心情を超えたところに「力量差」という壁が出現してバックボーンごと打ち砕いてしまう残酷性みたいなことだと思うんだけれど、あれだけ逃げを打って最後まで脚を残せる選手だったらアシストに甘んじてたことに説得力がないんじゃないかと思う。アンダルシアのレースだから勝てたというのかもしれないけれど、特にアドバンテージになるような描写も見られなかったし。解説者が散々「このまま逃げても勝てない」って言ってたのも、最後で単なる嘘になっちゃってる。
あとレースを具体的に描写することで自転車競技についての魅力を伝えようとした語り口には好感を持っていたのだけれど、だとしたら「ネコが飛び出して転倒」っていうのは通らないと思う。公道レースにネコが飛び出したことに関して飼い主やあの店にいた人たちが何も感じないのだとしたら、もう何でもアリってことになっちゃうもん。自分ちのネコのせいで選手が大怪我してんのに「ペペ頑張れ!」ってみんなして飛び出して行っちゃって、それはないでしょう。物語そのものがレースの威厳を軽視してしまったら、いくら登場人物たちが「レース好き」「レーサーすごい」って言ったところで作品の軸がぶれてしまうし、一見「自転車レースの魅力を云々」みたいな作風を取っているだけに、こういうご都合主義はすごく始末が悪いと思う。
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