[コメント] 千と千尋の神隠し(2001/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
油断していたのかもしれない、とは思う。
廃墟に忍び込んだ両親が屋台の食い物を貪り食らう様を見て、まぁなんと旨そうに食うのかと私は感嘆していた。口の中がじんわりと湿ってくるほど、あの食い物が旨そうに見えた。刹那、彼らは(私は)ブタになった。
びっくりした。彼らが(私が)ブタになるなんて思ってもみなかった。これは大変なことだ。私はブタになんかなりたくなかった。
以降、私はスクリーンの前で千尋を応援し続けることになる。何がどうなったって、私はとにかく人間に戻りたいと思いながら手に汗を握って、彼女の一挙手一投足に釘付けになった。
そして千尋がブタの中から両親を(私を)見つけ出してくれたとき、本当に安堵し、感動した。私は人間に戻れてよかった。
以上が私のこの映画についての感想のすべてである。
あの湯屋や世界にどんな矛盾や破綻があったとしても、それは私にとってブタの目からみた矛盾や破綻であって、ブタになった時点でそれを受け入れる準備ができていたということだ。逆に言えば、あの世界がどれだけ理路整然と構築されていたとしても、私がブタであるという理不尽を受け入れてしまっている以上、何の救いにもならない。
両親がブタになるシーンで、私は「私という人間が『千と千尋の神隠し』という映画を見ている」という立ち位置を覆されてしまったのだ。映画に夢中になるというのは、たぶんそういうことだ。私にとってこの映画は「鑑賞」ではなく「体験」だった。自らの体験に批評を与えることなどできないし、二度とこの映画を見ようとも思わない。だが、人生において、あと何度こんな体験に出会えるというのだろうか。
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