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[コメント] 武士の一分(2006/日)

ちょこりと浮いた檀れいのかかとにさえ宿る映画の品位。木村拓哉は生涯のベストアクトかもしれない。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 冒頭からパキッとエッジの効いた照明が作品世界を締めていて心地よかった。壮大なロケーションもいいけど、こういう徹底的に職人の手が入った「つくりもの」の映像も、これはこれで映画の楽しみと思う。こういうアナログっぽい映像って最近珍しいし、芝居もしっかり付けられてて嬉し。島田と久方ぶりに再会した加世が一行を見送る後姿の、かかとがちょっと浮いたあの感じとか、そういう細部への神経の行き届き方がもう半端じゃないんだ。『たそがれ〜』の物語があんまし琴線に触れなかったのと公開時の大騒ぎがアレだったのでスルーしてたけど、劇場で観ればよかったなぁ。1800円払う価値のある映画ですよ、これは。

 で、アレを巻き起こしたキムタクに関しては、失明以前のキラキラしたサムライボーイっぷりには冷や冷やしたものの視力を失ったあとの芝居は本当に素晴らしかったと思う。こんな良いキムタク観たことない。加えて言うなら目元のクマのメイクも絶妙。今後キムタクがどういう役者になっていくのか(どういう役者にもなっていかないかもしれないけれど)判らないが、今のところベストアクトでしょう。

 物語的には盲目の武士がまともに戦えるまでに成長するプロセスが緩くて少し説得力に欠けていた気もするけど、着地するべきただ一点に向かって完璧に着地してるし、この小さな物語は小さな作品世界とのマッチングもよかったんじゃないかと。何しろ、これだけマンネリで何のヒネリもない、しかも狭い狭い物語で2時間もたせる作品ってのは、本当に力のある人じゃなきゃ作れないと思うですよ。たいへん満足しました。

(評価:★4)

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