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[コメント] フラガール(2006/日)

これが日本映画の壁。
林田乃丞

 こういう大人でも子どもでも楽しめる王道映画の存在ってすごく貴重だと思う。

 誰でも知っている国の文化を出発点にして物語を立ち上げ、奇をてらわず、丹念に丹念にエピソードを積み重ねてドーンと泣かせる。あくまで「万人が理解しうる」かつ「観客の予想を裏切らない」という枠の中で作品の精度を上げていった「とっつきやすくてソコソコ面白い」映画。だけど、この「ソコソコ面白い」というのが実は大変で、いわゆる最大公約数がホントに「最大」だったときのパワーというのを、この映画が証明してるんじゃないかと。この手の作品は少しでも気を抜くと、瞬く間に「ケッ、チープだぜ」なんて切り捨てられるような駄作を生む危険を常に孕んでいて。すごく根気のいる作り方なんだろうなと思うんです。

 たとえば作家性がないとか独創性がないとか、「ありきたり」だとか「あざとい」とか、この映画に対するそういう評価は決して少なくないだろうし、それはたぶん正しい。だからこの作品が「つまらん」と思う映画作家はきっとたくさんいると思うんです。全然革新的じゃないし芸術的でもないし、アナーキーじゃないしアバンギャルドじゃないしシュールじゃないし。こんな型通りの枠にハマった作品をブチ壊したくて創作活動をしてる作家は数多くいるんでしょう。

 だけど、ほとんどの作家たちは既存のスタイルに勝てない。壊せない。そりゃ簡単に壊されちゃたまらんわけです。そんな、野心溢れる若手の前に立ちはだかる高い高い「日本映画の壁」として、この作品のような丁寧な王道映画が作られ続けていけばいいなぁ、と、私は切に願っております。

 最大級の敬意を込めて、『フラガール』、4点。

(評価:★4)

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