もし日本の侍精神を外国人に伝えたいならば、「天皇に忠義を尽くすのが侍の美学じゃないよ」「刀vs銃イコール侍vs文明開化じゃないよ」みたいな指摘は残念ながら避けて通れまへんぜ。だからこの映画はやっぱり「侍」ではなく「サムライ」という日本をモデルにした架空の文化を描いたエンターティメントストーリーということになります。ここで描かれているのは西洋人が考える、あるいは理想とするサムライ像ということなのかな。サムライ、ハラキリ、カミカゼ、スシ、ゲイシャ、フジヤマ、ぜーんぶ西洋解釈の捏造文化です。

　まーまーそれはそれで「サムライ」ということでよしとしましょう、ということにしてこの映画を観るならば、じゃあその「サムライ」という名で描かれた武士道（サムライズム？）が、物語の中で尊く魅力的な精神、思想、主義として描かれているのか、ってことがこの映画の価値を決めるということになります。事実、史実とは関係なく、観た人たちに「サムライってカッコいいなあ」「サムライの精神、憧れるなあ」って思わせればそれで良いのですが・・・。 　このサムライたち、何ゆえ戦っているのか僕には理解できませんでした。サムライの尊厳にかけて戦うにはあまりにエゴイスティック。劇中出てくる「民を守る」という台詞はどこにつながってるのですか？サムライという制度を守るためだけに命をかけて闘ってるにすぎない。何台もの大砲や銃に向かって刀一本と気合だけで立ち向かう、そんなイクサで死する奴らに悲しみをおぼえることは僕にはできません。

　たとえば・・・神風特攻隊員がまさに敵軍艦に我が命ごと零戦とともに「天皇陛下万歳！」と叫びながら突撃自爆していく様を、二十歳にも満たない若き兵が自分の命をささげ敵艦にぶつかって行く姿を、それを美しくカッコよく描いてみんなを賛同できるかっての？僕はやっぱ精一杯涙をこらえ震える全身をおさえ操縦桿を握り締め「おかーちゃん！」と叫び、命を絶っていく、その姿の悲しさを描いた映画に涙したいし、拍手を贈りたいです。

・・・ちょっともんくいいすぎたかな。僕が語るヒューマニズムも実はけっこう安っぽいのでこの辺にしとこ！