[コメント] ウォッチメン(2009/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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異なる思想といっても、積極的に意識し決断されたものはコメディアン(思想を持つまでも無く人間は野蛮である)、ロールシャッハ(リベラル)、オジマンディアス(平和主義)と神の目Dr.マンハッタン(宇宙的規模で見たら全ての思想はちっさい)ですね。ナイトオウル(実社会からの引き篭もり)とシルクスペクター(世襲)は、正義のヒーローをしている自分が好きな正義のヒーローです。ヒーロー業にも動機がまちまちあるというこの設定は面白いです。
かつ登場するヒーローのパワーに歴然とした差があります。オジマンディアスとDr.マンハッタンに他のヒーローは敵いません。パワーこそ全てなので、力のあるものの意見が通ることになります。オジマンディアスは平和主義者ですが、武力を行使しなければ平和にならないと考え、嘘と少数の被害の上に多数の平和を築きます。Dr.マンハッタンはちょっと馬鹿なので行動に一貫性がなく、アメリカも地球も恋人も捨てて、宇宙逃亡してしまいます。ロールシャッハは、ヒーローの介入によって社会を公正に保とうと考えていましたが、公正の徹底のためならば自分が犠牲になっても構わなくなり自己の生きる権利を自分で剥奪してしまいます。コメディアンは野蛮である人間性を否定しながらも人間に涙する人物でした。
人の思想と実際の行動に関する様々な矛盾を描いていると思います。政治的立場を持った人と関わると実際に感じますが、矛盾を持っている人が割と多くて、矛盾に当人は気づかない場合が多いです。この苦々しい感じのでかいバーションな気がして面白いと思いました。そして死にもせず逃亡もせず大きなものを負わず俗世間にもどることができたヒーローは、ナイトオウルとシルクスペクターだけでしたが、それはおそらく我々(あんま考えないで生きることができる)のことですね。我々に希望を託し物語は終わるのですが、どうなることやらって感じで結論を付けていません。うーむ、いいんじゃないでしょうか。
人物設定に関して、ロールシャッハとシルクスペクターがやむを得ない事情を持っていたことが、対等な意見の衝突を損なっていた気がして残念な気がしました。
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