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[コメント] ミッドナイト・ミート・トレイン(2008/米)

「見ること」に伴う暴力性や権力を見せるシーンが幾つか現れることで、このテーマをどう料理するかと期待したが、結局は思わせぶりだけで終わる。賛否が分かれそうな終盤の展開も嫌いではないが、これもひとつの定型に思え、尻すぼみ感は否めない。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







チンピラに絡まれている女性を救うシーンでレオン(ブラッドリー・クーパー)は、正面から相手を挑発して自分に近づかせて、監視カメラの存在を指摘して追い払う。その後にこの女性が地下鉄で行方不明となり、証拠写真持参で警察署を訪れたレオンは、応対した黒人女性刑事から、女性がチンピラに襲われていたとき、なぜ写真など撮っていたのかと質問され、答えに窮する。自分に接近してきたチンピラの姿を撮ったことでギャラリストから一目置かれたレオンは、当のチンピラを追い払うにもカメラの威を借り、傍観者であることと、有無を言わせぬ力の誇示とを同時に行なう者としてカメラの側に立っていたのだが、例の、ハゲワシに襲われかけた少女を撮影したことを批難されて自殺したカメラマンのような、倫理的な問いを投げかけられることになるわけだ。

同僚関係と思しき男女三人が襲われるシーンでは、一人目の犠牲者となる男が一撃を食らったとき、傍にいたもう一人の男の目に血が吹きつけ視界を奪い、頭部に槌を受けた男の眼球は飛び出る。最後に残った女が殺害されるシーンでは、攻撃を受け、切断された首が自分の胴体を見つめるまでの一連の出来事が、主観ショットで展開される。マホガニー(ヴィニー・ジョーンズ)が、屈強な黒人を相手に手間どっていたとき、車掌(トニー・カラン)が銃弾を撃ち込んで事を終わらせるシーンでも、後頭部から眼球が撃ち抜かれていた。レオンの友人がマホガニーに逆さに吊るされるシーンでも、床の血溜まりに自分の顔が写り込んでいる主観ショットが挿まれる。レオンの、街の暴力を写真家としての成功の糧にする立場とは逆に、犠牲者の側から、自分が殺されていくのを見つめ続けるという視線の残酷さ、目=視線を奪われるという暴力が現れる。チンピラから救われた後で殺される女性の職業も「モデル」だ。

また、レオンが精肉工場でマホガニーに追われながら身を隠して逃れるシーンも、「視線」の交錯としてアクションが演出されている。あの主観ショットシーンの強烈さや、CGで眼球や血飛沫の飛ぶケレンミに比べれば物足りないが、吊るされた肉にぶら下がってマホガニーの視線をかわそうとするところなどは、観ていて力が入る。とはいえ、電車内でマホガニーと格闘するシーンは普通のアクションシーンであり過ぎるし、何か異形の存在が人間を食糧としていたらしいことが明らかとなるシーンも、快楽殺人と思えた行為の目的が実はこうだった、という、その場でのちゃぶ台返しに過ぎず、伏線を張っておいてそれを回収するような展開ではないので、映画にはたまにこういうこともあるさという程度の意外性に過ぎず、特に驚きもなく陳腐。

(評価:★2)

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