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[コメント] 紀元前1万年(2008/米=ニュージーランド)

カミーラ・ベルの、鋭角的で濃い眉や、キャラメル色の肌の野性味と、清楚な顔立ち。彼女の美貌と、広大な自然の景観、手間の掛かったCG、これらを大画面で観る愉しさに集中したい。コスチュームプレイとして見れば、衣装や美術のデザイン自体は悪くない。
煽尼采

時代考証の正確さをこの監督に期待する気は初めからない。紀元前一万年という大仰な題名も、単に大仰にしたかっただけに違いなく、深い意味など求める気もない。

ただ、黒人達が例によって、主人公に指導される高貴な野蛮人として描かれていたり、青い目のシンボリックな扱いなど、「やはりエメリッヒ…」と、長い溜め息を誘われるような、気持ちの悪い感触はある。そうした所には、必要以上に神経質にはなりたくないのだが。

岩場や雪原、砂漠などの広々としたロケーションの扱いは悪くないけど、ジャングルが妙に作り物めいた狭苦しさを感じさせるのは如何なものか。やはりこの監督は、サイズのデカい対象を大づかみに表現する能力しかないのだろう。

何もなく広々とした空間は、その距離、隔絶感によって、登場人物達を心理的、肉体的に追い詰めるのだが、それよりも更に大きく広がる夜空に浮かぶ北極星が、精神的な指標になるという形でシンボライズされる辺りは割に巧い扱いだと思える。マンモスも、自然の凶暴さと同時に、その神聖さをも担っているようであり、彼らが人間を踏み潰すという行為には、暴力と正義の両義性が与えられている。まぁ、この辺もセオリー通りと言えばまさにそうだけど。

ただ、あまりにもセオリー通りに進むプロットはまだ許せるとしても、そのセオリーに観客を心地よく乗せる為の匙加減すら分かっていないのが、この監督の決定的に痛い所。彼の語り口には幼稚な正義感やヒューマニズムの押しつけが感じられ、ただひたすらワッと驚く映画を撮ってやろうという純粋なバカさ加減が欠けている。だからこそ彼の作品は、「バカ映画」とは呼び易くても、そこに「愛すべき」という形容詞を冠するのが難しい。

結局、最後に延々と続くエンドロールを眺めながら、「この人数と予算を、もっとマシな事に使おうという考えが、この大人達の脳裏に浮かばなかったんだろうか…」と、やや茫然としてしまうのだった。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)Lostie[*]

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