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[コメント] 秒速5センチメートル(2007/日)

恋人たちの「距離」を描くという事。その距離(=空間)が投影される背景美術の、アングル、色彩、構図の完成度。だが、それを単なる綺麗な絵以上にするべきキャラクターがペラい。中学生のポエムのようなナレーション等、その退屈さとむず痒さは拷問の域。
煽尼采

時に実写と見紛うばかりの緻密さで描かれた背景に、ペラペラなキャラはほぼ完全に埋没。キャラクターに演技をさせていない訳ではないが、鑑賞後即どんな顔だったか失念するほど無個性なキャラデザ。キャラクターよりも、飛び立つロケットの煙の方がよほど表情豊かに見えてしまうのが新海流、なんですかね。

風景に内的独白が重なる手法と、キャラクターたちの、恋する対象への、埋まらない距離、一方的に積もりゆく思い。相互性があるようでないこの物語には、最初から、哀しい自分を憐れむ湿っぽいナルシシズムしか無い訳で。作者の自意識から垂れ流された、虹色に輝く排泄物。

新海さんて人は、恋愛なんかを題材にしてはいるけど、本当は他人に興味なんか無いんじゃないかと。自らの脳内宇宙が心地よく麗しくアニメーションという形で分泌できればそれでいいんだろう。僕はもう、このネオテニー的なロマンチシズムの失禁状態には、気色悪くてジンマシンを起こしそうになる。

大体この人は、最初の『ほしのこえ』が「一人で作ったにも関らず、このクオリティ…」という点が注目された事でその稚拙さは脇にやられ、そうして自他共に何か勘違いしたまま脚本や演出も自分でやり続けているといった印象がある。本来ならば優秀なスタッフの一人としてアニメーションに関るべき才能が無駄使いされているように思えてならない。

(評価:★1)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)太陽と戦慄 DSCH[*] おーい粗茶[*] [*] Lostie[*]

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