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[コメント] 午後の遺言状(1995/日)

チャーミングな老人たちの、人生の穏やかな秋日和の中で展開する、予測不能な出来事の連続で綴られる前半こそが素晴らしい。だが、人生の先に待つ道筋をただなぞるような虚しさの漂う後半もまた、作品にとって欠かせない部分ではあったのだろう。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ここからの更なる飛躍を求めたい観客にとって、あのラストシーンに「驚き」は充分ではないが、多義的かつ強靭な意志によって点睛が打たれたのも確か。棺桶の釘を打つための大石が川に捨てられたのは、「死」が確実に未来にあるということそのものへの反抗なのか、それとも、愛した男の妻である老女優への、いまだ「女」を捨てぬ者としての闘いなのか。いずれにせよ、「死」を内包しつつもそれに強靭に抗う意志の確かさは伝わってくる。

それにしても、あの「ドンと突け」と男根を励ます儀式を穏やかな表情で見つめるベテラン女優二人……、この穏やかな異様さは、やはり老境というものだけが到達しうる境地なのだろうか。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)寒山拾得[*]

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