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[コメント] 世界が燃えつきる日(1977/米)

核戦争後の世界で生き残るための教訓。
たわば

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まず生き残った人間はヌードのグラビアを眺めたりしてはいけない。映画の序盤でヌードグラビアにタバコの不始末の火がついて、ミサイルが大爆発を起こして基地が全滅してしまうが、これは肉欲に火がつくと身の破滅を招くという教訓を意味している。

次に無愛想でもいけない。基地から車で脱出した4人だったが、堅物で面白みのなさそうな陰気な者が役名すら覚える間もなく、車が横転しただけで死んでしまう。陽気で明るくないとアメリカ社会では認められないという教訓だ。

その後ラスベガスでドミニク・サンダを救出するが、他の人間は跡形もなく消えている。おそらくギャンブルのような享楽にふけるような浮ついた人間は地に足が着いてないので風圧で吹き飛ばされ易いという暗喩だろう。また、女日照りの男たちの中に金髪美女が加わっても彼らは性欲でムラムラしたりはしない。清く正しい健全さこそ生き残る術なのだ。ところがそんな好人物の一人である黒人が、なんとゴキブリに食われて死んでしまう。これは核戦争後の世界に有色人種が生きる場所はないという警告だ。

続いてやたらコントロールよく石を投げる少年を救出するが、これも彼が野球少年?だったおかげである。アメリカ人は野球好きを決して見捨てはしないのだ。そんな彼らを『続・猿の惑星』よろしく核を浴びて醜くなった男たちが襲うのだが、少年のナイスピッチングとロケットランチャーで容赦なく殲滅する。身も心も醜い者などに用はないのだ。

やがて大洪水の洗礼を済ませた彼らが辿り着いた先には、自然豊かで放射能とは無縁の健康的な美しい人々が集うコミュニティが待っていた。まるで選ばれた者だけが生きる資格があるという選民思想みたいな結末で、聖書のようにありがたい教訓に満ちた輝かしい物語であった。

映画の内容は荒唐無稽なSFだが、核戦争があっても米国は滅びないと信じているアメリカ人のリアルな核意識が巨大サソリやゴキブリよりも恐ろしい世紀末映画だった。

(評価:★3)

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