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[コメント] 少女ムシェット(1967/仏)

泥のような人生を洗い流した少女。
たわば

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画に出てくる液体に注目してみた。酒、コーヒー、ミルク、雨水、聖水、血、涙、そして池の水。泥水をわざとはねたり、泥をブルジョワの同級生に投げつけたり、泥のぬかるみで靴がぬげたり、泥の靴をじゅうたんにこすりつけたりと、泥にまみれる人生を送るムシェット。そんな彼女に染みついた泥は、酒や甘いコーヒーでは洗い流すことはできなかった。ミルクは自分のものでなく、雨水はぬかるんで足下をすくい、宗教に救いもなく、自らの血を流し傷ついてみても解決しない。そして彼女の流した涙でさえも、泥を落とす事はできなかった。そんなムシェットを理解してくれるのは母親しかいない。しかしその母も亡くなり、この世には彼女を理解してくれる人はいなくなった。そうなるとムシェットは猟師に狙われたうさぎも同然であり、もはや目の前にある池に身を投げ出すしか道はなかった。ムシェットは水の底に身を沈めることで、ようやく自らの泥を落とすことができたのだった。

これは「ムシェットが自殺した」という悲しい結末ではなく、「自らの命を捧げることで彼女はこの世から救われた」と解釈した。そうでも思わなければ辛すぎるよ、この映画は・・・。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)寒山拾得

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