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[コメント] 4人の食卓(2003/韓国)

ホラーを越境する狂気と哀しみ。
よだか

狂気と正気のはざまをさまようチョン・ジヒョンが言うように、人は経験した事実を信じるのではなく、自分が受け入れられることを事実として信じるのだ。そして、自分が信じていた現実のまえに、受け入れがたい真実を告げられたとき、人と人との信頼関係はもろくも崩壊し、真実からの逃避すらできなかったとき、狂気の世界にいざなわれる。

チョン・ジヒョンが親友に語った過去。結婚を間近にひかえたパク・シニヤンに語った過去。それらがじっさい真実だったかどうかも本当にはわからない。彼らが、彼女が発した言葉を望んだのだ。彼女との信頼関係のなかで、その過去を受け入れたのだ。その結果、皮肉にも彼女との関係は崩壊し、現実そのものが崩壊してしまった。

現実とはいったいなんなのか。信じるとはいったいなんのか。安定した現実にも、崩壊した現実にも等しく狂気がひそんでいる。無機質で均一な高層アパート群の陰鬱な風景は、その狂気を、そして信じた悲劇と信じ切れなかった悲哀を冷たく包み込んでいる。

(評価:★4)

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