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[コメント] マイマイ新子と千年の魔法(2009/日)

日常的な少女の空想と願いを、ものの見事に表現した作品。特にこのワンシーンが溢れんばかりの映画の魅力を物語る。
ダリア

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この作品には随所にハッとするシーンが盛り込まれているが、その中でも特に強く惹きつけられたワンシーン。それは、発掘隊が「お姫様がいたかも」と言った現代の空き地から、しゅーっと柱が伸びてきてあっという間に平安時代の屋敷が組み立てられたシーン。

空想世界の構築とはこういう風だよなあと実感した。何かのキーワードをきっかけに、一点から無限の世界へ、頭の中で一瞬のうちにその世界が張り巡らされる。幻想的で美しく、しかも力強い素敵なワンシーンだ。

終盤、新子の空想に貴伊子が入り込み、その世界を体感する。同じ空想世界を共有し、一緒に作り上げていくほど深い絆で結ばれたふたりの少女。

貴伊子はナギコとシンクロするが、それで大きな事件があるわけでもなく、大冒険をするわけでもない。ただ、仲良くなりたいと望む下働きの少女と人形遊びをし、草笛を吹く。ささやかなようでとても切実な願い、「あの子と遊びたい」───その望みを叶えたナギコ。

新子と貴伊子の日常も大きな冒険は無い。少女らは野や畑を駆けめぐり、川遊びで池を作り、草の汁を吸い、空想ゴッコをして語り合う。千年経っても少女らの願いは変わらない。ただ「今日も明日もあの子と遊ぶ」、それだけで幸せでそう願う毎日。そんな日常を淡々と描くことで、少女の持つキラキラとした希望や瑞々しい感情が浮き彫りになる。

ラストの、草笛を吹き合う二組の少女達の姿が、目に焼きついて離れない。

(評価:★5)

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